DNS「1.1.1.2」と「1.1.1.3」とは? 1.1.1.1との違いや使い分けを解説
はじめに
「1.1.1.1」というDNSサーバーをご存じでしょうか? Cloudflareが提供しているパブリックDNSで、速度やプライバシーを重視したDNSサービスとして広く利用されています。 実はCloudflareには、通常の「1.1.1.1」だけでなく、
1.1.1.21.1.1.3というDNSサーバーも用意されています。
これらは単なる別のDNSサーバーではありません。 特定の危険なサイトやコンテンツをDNSレベルでブロックするための「1.1.1.1 for Families」 として提供されています。
では、1.1.1.2と1.1.1.3にはどのような違いがあるのでしょうか? それぞれの特徴や仕組み、1.1.1.1との違い、設定方法、そして利用時の注意点について解説します。
1. そもそもDNSとは?
まず、DNSについて簡単に確認しておきましょう。 DNS(Domain Name System)は、ドメイン名とIPアドレスを対応付ける仕組みです。 例えば、ブラウザで、
example.com
と入力したとします。
コンピューターは、その文字列だけでは接続先のサーバーを判断できません。 そこでDNSに問い合わせて、
example.com
↓
IPアドレス
という変換を行います。
イメージとしては、DNSは 「インターネット上の電話帳」 のようなものです。 Cloudflareの1.1.1.1も、この名前解決を行う「パブリックDNSリゾルバー」の一つです。
2. 1.1.1.1、1.1.1.2、1.1.1.3の違い
まずは、それぞれの役割を比較してみましょう。
| DNS | 主な用途 |
|---|---|
1.1.1.1 |
通常のDNS名前解決 |
1.1.1.2 |
マルウェアなどをブロック |
1.1.1.3 |
マルウェアなど + 成人向けコンテンツをブロック |
Cloudflareの現在のドキュメントでは、1.1.1.1はコンテンツフィルタリングを行わない通常のリゾルバー、1.1.1.2は悪意のあるドメインなどをブロックするリゾルバー、1.1.1.3はそれに加えて成人向けコンテンツもブロックするリゾルバーとして整理されています。
つまり、
1.1.1.1
↓
通常のDNS
1.1.1.2
↓
DNS + マルウェア対策
1.1.1.3
↓
DNS + マルウェア対策 + 成人向けコンテンツ対策
という関係です。
3. 1.1.1.2とは?
1.1.1.2は、Cloudflareの「1.1.1.1 for Families」に含まれるマルウェアブロッキング用のDNSです。
主なDNSアドレスは次のとおりです。
IPv4
1.1.1.2
1.0.0.2
IPv6では、
2606:4700:4700::1112
2606:4700:4700::1002
が利用できます。
通常の1.1.1.1と同じようにDNS名前解決を行いますが、マルウェアやフィッシングなどに関連すると分類されたドメインへのアクセスをブロックします。
どんな人に向いている?
例えば、
- 家庭のネットワークで安全性を高めたい
- 子どもが利用する端末を保護したい
- マルウェアサイトへのアクセスをDNSレベルで防ぎたい
- 特別なセキュリティソフトを導入せず、簡単な対策を追加したい といった用途に向いています。
4. 1.1.1.3とは?
1.1.1.3は、1.1.1.2の機能に加えて、成人向けコンテンツのフィルタリングを行うDNSです。
IPv4では、
1.1.1.3
1.0.0.3
を利用します。
IPv6では、
2606:4700:4700::1113
2606:4700:4700::1003
が利用できます。
つまり、
1.1.1.2
= マルウェアをブロック
1.1.1.3
= マルウェアをブロック
+ 成人向けコンテンツをブロック
という違いです。
Cloudflareは1.1.1.3について、成人向けコンテンツのブロックに加えて、公開検索エンジンをSafe Searchに固定する機能も説明しています。
5. DNSを変えるだけで、なぜサイトをブロックできるのか?
ここが1.1.1.2や1.1.1.3の面白いところです。
DNSは単なる「名前解決」の仕組みに見えますが、DNSサーバー側で特定のドメインに対して異なる応答を返すことで、アクセスを制限できます。
例えば、
example-malware.com
というドメインが危険なサイトとして分類されているとします。
通常のDNSなら、
example-malware.com
↓
実際のIPアドレス
を返します。
しかし、フィルタリングDNSでは、
example-malware.com
↓
ブロック
という処理が行われます。
Cloudflareの説明では、悪意のあるドメインとして分類された場合、実際のIPアドレスではなく 0.0.0.0 を返すことで、端末がそのサイトへ接続できないようにしています。
6. 1.1.1.2 / 1.1.1.3は「ウイルス対策ソフト」ではない
ここは重要なポイントです。
1.1.1.2や1.1.1.3を設定したからといって、端末そのものが完全に保護されるわけではありません。
あくまでDNSによるフィルタリングです。
例えば、
危険なドメインへのアクセス
↓
DNSに問い合わせ
↓
1.1.1.2 / 1.1.1.3
↓
危険なドメインと判定
↓
名前解決をブロック
という仕組みです。
そのため、
- ウイルス対策ソフト
- OSのセキュリティ機能
- ブラウザのセキュリティ機能
- ファイアウォール
- セキュリティアップデート などを置き換えるものではありません。
「セキュリティ対策の一層を追加するもの」と考えるのが適切です。
7. 1.1.1.2と1.1.1.3、どちらを使えばいい?
用途によって選ぶと分かりやすいでしょう。
セキュリティ対策を重視するなら「1.1.1.2」
1.1.1.2
1.0.0.2
がおすすめです。 マルウェアやフィッシングなどへの対策をDNSレベルで追加したい場合に向いています。
成人向けコンテンツも制限したいなら「1.1.1.3」
1.1.1.3
1.0.0.3
を利用します。 家庭のネットワークなどで、成人向けコンテンツへのアクセスも制限したい場合はこちらが候補になります。
8. 設定方法
設定は比較的簡単です。 例えばルーターのDNS設定で、
1.1.1.2を使う場合
プライマリDNS
1.1.1.2
セカンダリDNS
1.0.0.2
1.1.1.3を使う場合
プライマリDNS
1.1.1.3
セカンダリDNS
1.0.0.3
と設定します。Cloudflareもルーター設定でこの組み合わせを案内しています。 なお、IPv6を利用する環境ではIPv6側のDNS設定も確認する必要があります。
9. DNS over HTTPS(DoH)やDNS over TLS(DoT)にも対応
DNSの問い合わせは、通常のDNSでは暗号化されない場合があります。
そこで利用できるのが、
- DNS over HTTPS(DoH)
- DNS over TLS(DoT) です。
Cloudflareは1.1.1.2 / 1.1.1.3についても、暗号化されたDNS接続を利用できるようにしています。
例えばDoHでは、
1.1.1.2
に相当するセキュリティ用エンドポイントとして、
https://security.cloudflare-dns.com/dns-query
が案内されています。
1.1.1.3に相当するファミリー向けエンドポイントは、
https://family.cloudflare-dns.com/dns-query
です。
10. 「DNSを変えれば絶対に安全」ではない
ここまで読むと、
1.1.1.2や1.1.1.3に変更すれば安全なのでは?
と思われるかもしれません。 しかし、これは少し違います。
DNSフィルタリングには限界があります。 例えば、危険なサイトでもDNSによる分類対象になっていなかったり、DNSを経由しない仕組みが使われたりすれば、 DNSフィルタリングだけでは防げない場合があります。
また、端末やブラウザ側で別のDNS設定が使われていれば、ルーター側で設定したDNSが利用されないケースもあります。
したがって、
1.1.1.2 / 1.1.1.3はセキュリティ対策の「一部」であって、万能な防御ではない
と理解しておくことが重要です。
11. フィルタリングには「誤判定」もある
もう一つ注意したいのが、フィルタリングの誤判定です。 Webサイトをカテゴリーごとに分類する以上、すべてのサイトを完璧に分類できるとは限りません。
実際にCloudflareは、1.1.1.3のサービス開始時に、分類上の問題によって一部のLGBTQIA+関連サイトが意図せずブロックされた事例を公開しています。Cloudflareはこの問題を誤りとして説明し、対応についても公表しました。
これはDNSフィルタリングを利用するうえで、
「ブロックされた = 本当に危険なサイト」
とは限らないことを示す一例でもあります。
12. 1.1.1.1と1.1.1.2 / 1.1.1.3を比較
最後に、それぞれの特徴を整理してみましょう。
| 項目 | 1.1.1.1 | 1.1.1.2 | 1.1.1.3 |
|---|---|---|---|
| 通常のDNS名前解決 | ○ | ○ | ○ |
| マルウェア対策 | × | ○ | ○ |
| 成人向けコンテンツのフィルタリング | × | × | ○ |
| 家庭での利用 | ○ | ○ | ○ |
| コンテンツフィルタリング | なし | あり | あり |
Cloudflareの公式ドキュメントでも、1.1.1.1はフィルタリングなし、1.1.1.2はマルウェア等のブロック、1.1.1.3はマルウェア等と成人向けコンテンツのブロックという位置付けになっています。
まとめ
CloudflareのDNSには、用途に応じて複数の選択肢があります。
1.1.1.1
↓
通常のパブリックDNS
1.1.1.2
↓
マルウェアなどをブロック
1.1.1.3
↓
マルウェアなど
+
成人向けコンテンツをブロック
特に覚えておきたいのは、
1.1.1.1= 通常のDNS1.1.1.2= マルウェア対策1.1.1.3= マルウェア対策 + 成人向けコンテンツ対策 という違いです。
DNSを変更するだけで利用できるため、家庭や個人の端末に比較的簡単にセキュリティ対策を1つ追加できるのが大きなメリットです。 ただし、DNSフィルタリングだけですべての脅威を防げるわけではありません。 OSやブラウザを最新の状態に保ち、セキュリティソフトなども併用しながら、複数の対策を組み合わせることが重要です。